葛飾北斎

葛飾北斎(かつしかほくさい)1760(宝暦10)年~1849(嘉永2)年
江戸時代後期の絵師で90年の生涯、あらゆるものを描き尽くそうと情熱を傾けました。その範囲は版画、肉筆浮世絵、出版本の挿絵など多岐にわたり、画題も人物や風景、動植物或いは架空の妖怪や龍、波や雨などの自然現象に至るおよそこの世界の神羅万象を対象としました。その作品は世界に大きな影響を与え、1998年アメリカの雑誌「ライフ」が「この1000年間で最も偉大な業績をあげた世界の100人」に日本人として唯一選ばれています。

①葛飾北斎はどんな人?

葛飾北斎!絵に全てを捧げた男の生涯について  

北斎は幼少時より亡くなる直前まで絵に没頭し、しかも絵のジャンルが多岐にわたっているため一言では言い表せない側面を持っています。実は名前も次々に変え葛飾北斎と名乗った期間は生涯の一時期のみです。その生涯をたどってみましょう。
北斎の家系や幼少期の動静についてはよく分かっていないことも多くありますが、本人の言によりますと、6歳の頃には絵を描くことに強い関心を持っていました。19歳(1778年)の時に当時トップの浮世絵師の勝川春章に入門して勝川春朗の名前をもらいデビューしました。しかし画壇での地位も収入も低かった北斎は絵を上手くなりたいと浮世絵以外の画法や西洋画について学びました。やがて代表作の「富嶽三十六景」を生み出します。圧倒的な画力、巧みな構図で各地より眺めた富士山の三十六景を描きましたが好評のため新たに十景が追加され実際には四十六景となりました。とりわけ「神奈川沖浪裏」はThe Great Waveとして知られレオナルドダビンチの「モナリザ」と並ぶ名画とされ新1000円札の裏側のデザインにも採用されました。しかしこの「富嶽三十六景」の完成は70歳を過ぎてからのことでした。それまでに北斎は様々な画法を学んでいます。その中には西洋画の遠近法や北斎漫画と呼ばれる絵手本があります。この絵手本はその名の通り弟子たちに人物、動物、魚、風景などのデッサンの基本を伝えようとした画集でしたがその内容の面白さに出版社が急遽売り出したものでベストセラーとなりました。北斎は自分の習得した技法を惜しげもなく披露する人でした。

②葛飾北斎の生き方から学ぼう

葛飾北斎の生き方に学ぶ  TOSS LAND

江戸後期活躍した北斎の絵は様々なルートでヨーロッパへ伝わりジャポニズムと呼ばれる流行を生み出し多大の影響を与えました。「富嶽三十六景」の跋文(バツブン=あとがき)に「七十才前に描くところは実に取るに足るものなし」「七十三才にしてやや禽獣虫魚の骨格草木の出生を悟し得たり」実にこの歳になって「富嶽三十六景」を完成させたのでした。さらに「百有十才にしては一点一格にして生けるが如くならん。願わくは長寿の君子、余が言の妄ならざるを見たもふべし。」(110歳になったらどんなものも生きているように描けるようになろう。どうぞ長生きされて、この私の言葉が嘘でないことを確かめて頂きたいものである)と70歳を過ぎてなお自分の画力が向上していることを確信しています。この向上を110歳まで続けることができれば- - と自分の努力に自信を持っていました。死の直前の言葉が残っています。「天我をして十年の命を長がらわしめば」(天が自分に10年長生きさせてくれれば)と言いしばらくして、「天我をして五年の命を保たしめば、真正の画工となるを得べしと、言吃りて死す」(天が自分に5年の命を保ってくれれば、真の画工となることができるのに、と言葉を詰らせながら亡くなった)死の間際まで究極の画を求めた人でした。

さらに学ぼう

(動画+読み物)JOG(1046) 葛飾北斎が西欧に与えた衝撃 伊勢雅臣

 ゴッホは「こんなに単純な日本人が教えてくれるものこそ、まずは真の宗教ではないだろうか」と述べました。北斎を通じて伝わった自然信仰がヨーロッパに与えた影響は大きく、ここ千年の中で見ても特筆すべき事件でした。事実、1998年に米LIFE誌はミレミアム特集号で「この1000年間で最も重要な出来事と人物・100選
(The Most Imporatant Events and People of the Past, 1000Year)の中で唯一紹介された日本人でした。つまり北斎の存在自体が驚くべき(事件)として扱われています。

すみだ北斎美術館

「すみだ北斎美術館」には北斎に関する作品展示の他、Web上にも北斎の生涯や世界への影響等が幅広く解説されています。

北斎の本

北斎に関する書籍も充実していますが以下の本が入手しやすいようです。

葛飾北斎伝 岩波文庫
富嶽三十六景 岩波文庫

東京,江戸,芸術家,AK

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