荻生徂徠

荻生徂徠(おぎゅうそらい) 1866(寛文6年)~1825(享保13年) 江戸時代中期の儒学者で徳川幕府公認の学問であった朱子学を批判し、中国古代の古典を正確に理解することの必要性を説き古文辞学と称しました。五代将軍綱吉の幕府側用人栁沢吉保に仕え、後八代将軍吉宗の信任を得て「政談」という改革論を進呈し、身分にとらわれない人材登用など現代の政治経済改革に通じる政策論を述べています。肖像は国立公文書館デジタルアーカイブ『先哲像伝』より。

①荻生徂徠の足跡をたどろう

荻生徂徠|古文辞学,先王の道と経世済民 Hitopedia[ヒトペディア]

荻生徂徠は当時館林藩主であった徳川綱吉に仕える医師の方庵の二男として江戸で生まれました。しかしその父が綱吉の怒りにふれて江戸を追放され家族で母の実家の上総国長柄郡本納村(現・千葉県茂原市)に移りました。延宝7年(1679)徂徠14歳の時でした。ここで徂徠は漢籍を学び儒者となる基礎を築きました。やがて徂徠25歳の元禄3年(1690)に父方庵が赦免され父とともに江戸にもどりました。この本納での約10年間、徂徠は孤独な中独学で漢籍などを読みこなし独自の思想を形成していきます。江戸に戻った徂徠は5代将軍になっていた綱吉側近で幕府側用人の柳沢吉保に仕え将軍綱吉にも講義をするなど信頼されるようになっていきます。しかし宝永7年(1709)綱吉の死去により柳沢吉保が失脚し徂徠は幕政を離れ蘐園塾という私塾を開きました。徂徠の考えは古代中国聖人の「礼楽刑政」という先王の道を理想とする政治を行って人々を幸福にするということでした。礼楽刑政とは礼節、楽曲、刑罰、政治を示し生きていく上で必要な具体的な事柄(=生活)を言います。これらを離れて社会を安寧にする方法はないと言っています。つまり、礼楽刑政という具体的な処方箋を示すことが世を治め人々(民)を救うことであるとの考えでした。このため古文辞学という中国の古典の原典に直接触れてその読みのままに受け止めようとしました。このような研究姿勢は日本の古文辞ともいえる古事記や万葉集をその当時のありのままに読んでみようとする国学の勃興につながる契機になりました。晩年には八代将軍徳川吉宗の信任を得て政治顧問のような立場になり助言をします。その内容は「政談」という改革論にまとめられて進呈されます。しかしほどなく享保13年(1728年)に死去しました。

③荻生徂徠の生き方から学ぼう

『徂徠訓』を一か条ずつ味わってみる

 徂徠の残した書籍は膨大なもので簡単には紹介できませんが、「徂徠訓」として人の上に立ち人を育てる要諦を八箇条にまとめたものがあるのでこれを読んでみましょう。
一、 人の長所を初めより知らんと求むべからず、人を用いて初めて長所の現わるるものなり。
(訳)人の長所を始めから知ろうとしてはいけない。人と一緒に仕事をして、使ってみて始めて長所が現れるものである。
二、 人はその長所のみを取らば、すなわち可なり。短所を知るは要せず。
(訳)人はその長所のみをとればよい。短所を知る必要はない。
三、 おのれが好みに合う者のみを用うるなかれ。
(訳)自分の好みに合う者だけを採用、登用するな。
四、 小過をとがむるなかれ。ただ事を大切になさば可なり。
(訳)小さい過ちをとがめる必要はない。ただ仕事を大切にすればよいのだ。
五、 用うる上は信頼し、十分にゆだねるべし。
(訳)人を用いる上で、人を信頼して、その仕事を十分に委せよ。
六、 上にある者、下にある者と才知を争う事なかれ。
(訳)上にある者は、下の者と才智を争ってはいけない。
七、 人材は必ず一癖あるものと知るべし。ただし、その癖は器材なるがゆえに、癖を捨てるべからず。
(訳)人は必ず一癖あるものである。それはその人が特徴のある器であるからである。癖を捨ててはいけない。 癖は特徴で良いずば抜けたところにもなるからである。
八、 かくして、上手に人を用うれば事に適し、時に応ずる人物、必ずこれにあり。
(訳)以上に着眼して、良く用いれば、事に適し、時に応じる程の人物は必ずいるものである。

どうでしょう、時代は身分制度に縛られた江戸中期です。既に現代に通じる人材登用・人材育成の考えが見て取れます。徂徠はこのような方針で幕府政治を盤石なものにし、社会を安定させようとしました。旧来のやり方に捕らわれない徂徠の方針のもと多くの弟子を育てました。

さらに学ぼう

荻生徂徠墓  Wikipedia

墓地は東京都港区三田の長松寺にあります。

荻生徂徠勉学の地  千葉県

若い頃学んだ場所は千葉県指定の史跡として保存されています。

 荻生徂徠「政談」 講談社学術文庫

比較的読みやすいようです。

東京,江戸,学者,AK

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